【感想】銀河英雄伝説列伝 1巻 晴れあがる銀河

銀英伝公式トリビュート小説、電子書籍で購入しました。

ここ数ヶ月、「三國志14」のコラボシナリオだったり旧作アニメ劇場版のリバイバル上映が開催されたりで何年かぶりに銀英伝熱に火がついてるわけですが(笑)。OVAも本伝や外伝を原作を読み返しながら何十回目かの再試聴してますしね。
そんな中で発売されたのがこの公式トリビュート小説。原作者の田中芳樹はあくまで監修にとどまって他の作家たちが自由に短編を書いてるようですね。オーディオドラマ「ユリアンのイゼルローン日記」の対談で「二次創作物を出したい」みたいな話があったのでそれを実現したということなのかも。

で、いい機会なのでちょっと買ってみました。原作は全部紙の本で所持してるのでこれもそうしようかなと思いましたがまああくまでトリビュートなのでそこまでこだわらなくてもいいかと。ついでに言えば書店に買いに行くより電子書籍で買ったほうが楽だし早いし(笑)。

というわけで午前0時からさっそく読むことにしたわけですが、それに際しては自分自身でちょっと念押しを。「あくまでトリビュートという寛容な気持ちで読む」というように。そうしないと細かい部分の違和感とかでイラつきながら読んでしまうと嫌ですからね。銀英伝に限らず他の作者のスピンオフみたいなのは受け付けない時もあるのでそうならないようにと。

・小川一水「竜神滝(ドラッハ・ヴァッサーフェル)の皇帝陛下」

ラインハルトが新婚旅行でお供のエミールと釣りをする話。最初からやたらとコメディタッチの話を持ってきてくれたおかげで上に書いたような堅苦しい意識は吹き飛びました(笑)。原作の細かいネタがちりばめられてる当たりも楽しめますね。ラインハルトの天然ボケともいえる行動がいちいち笑える(笑)。

・石持浅海「士官学校生の恋」

士官学校時代のヤンがキャゼルヌ相手にパティシエの友人が恋人の求める帝国の菓子作りに協力したという体験を語るちょっと異様な話の前半。この二人がこんな会話をするというのは普通はありえないですしね。しかし後半にキャゼルヌとデート中の恋人オルタンスがその件に関して名探偵ぶりを発揮することに。最後はきっちり予言で締めるあたりがさすが未来のキャゼルヌ夫人(笑)。

・小前亮「ティエリー・ボナール最後の戦い」

同盟の航路情報が何者かに奪われてそれを使って攻めてくる帝国の私兵艦隊。それに対する第9艦隊ペテルセン提督、その分艦隊司令ウランフとティエリー・ボナールの戦いを描いた話。この話は銀英伝らしい艦隊戦でなかなか面白かったですねー。ついでにフェザーンでワレンコフ自治領主を蹴落としてルビンスキーがその地位へと登る過程のエピソードもあって楽しめました。

・太田忠司「レナーテは語る」

オーベルシュタインが大佐時代、情報処理課の課長だったときに起きた殺人事件。その部下だった女性、レナーテが本編終了後にオーベルシュタインの執事だったラーベナルトの住む田舎を訪れてその事件について語る。登場人物に3人目の「コンラート」が出てきたので何か関係あるのかなと思いましたがこちらは特に何もなかったですね。最後にオーベルシュタインが犬を拾ったエピソードにつながっていくことに。
 
・高島雄哉「星たちの舞台 」

士官学校卒業目前のヤンが音楽学校のヒュパティア・ミルズという一歳年下の女性と寮の存続のために演劇をするという話。女性からは一人を除いてもてないヤンには珍しい淡い恋のエピソードでもありましたね。
 
・藤井太洋「晴れあがる銀河」

フェザーン誕生秘話、とでも言うべき話ですね。ラープの名前が出てきた時点でファンならニヤリとするはず。まだルドルフの恐怖が明確になってない時期ですけどすでにその予兆が。主人公が最後に改名するにあたっての候補のうちどれを選んだかも当然わかりますよねー。


……というわけで読み終えましたが期待以上に楽しめましたねー。もちろん田中芳樹が書いてるわけではないのでヤンとかの性格や言動に違和感がないというと嘘になりますが、それはそれでそれぞれの作者が抱くキャラクター像というのも感じられて面白い。
1巻ということなので続巻も予定されてるんでしょうけど、原作でさらりとしか触れられてない過去の会戦なんかを描いてくれたらまた楽しめそうですね!


銀河英雄伝説列伝1 (晴れあがる銀河) (創元SF文庫) - 石持 浅海, 太田 忠司, 小川 一水, 小前 亮, 高島 雄哉, 藤井 太洋, 田中芳樹
銀河英雄伝説列伝1 (晴れあがる銀河) (創元SF文庫) - 石持 浅海, 太田 忠司, 小川 一水, 小前 亮, 高島 雄哉, 藤井 太洋, 田中芳樹

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